プロパンガス会社の車両管理を考える 第3回|なぜLPガス配送ではバック事故が多いのか?現場で見えてきた5つの原因
2026/07/30
はじめに
LPガス会社では、安全運転教育に力を入れている会社が数多くあります。
可燃性の高いLPガスを取り扱うため、保安教育はもちろん、
交通事故防止についても定期的な安全教育を実施している会社が少なくありません。

しかし、そのような取り組みを行っていても、
現場では毎年のように発生してしまう事故があります。
それが「バック事故」です。
プロパンガスのボンベが置いてある場所は一般の家庭であれば、
どちらかと言えば裏側。
お店やビルでも、目立つところにはありません。
ボンベは、電動のパワーゲートを使って下ろし、タイヤがついたキャリアで運びますが、
それでも、なるべく近くまで車を寄せたいと思うのが運転者の人情。
狭いところに入ってしまい、電柱への接触、ブロック塀やカーポートとの接触などが起こってしまいます。
一件一件は大きな事故ではないかもしれません。
しかし、修理費用だけでなく、お客様からの信頼や企業イメージにも影響を与えるため、
多くのLPガス会社が頭を悩ませています。
今回は、20年以上にわたりLPガス会社の車両管理に携わってきた経験から、
バック事故が発生しやすい理由と、その対策について考えてみます。
バック事故は運転技術だけの問題ではない
バック事故というと、「運転が苦手だから」「確認不足だから」と考えられがちです。
もちろん、基本的な安全確認は重要ですが、
現場を見ていると、それだけでは説明できないケースが多くあります。
実際には、長年経験を積んだベテランドライバーでもバック事故を起こすことがあります。
その理由は、LPガス配送という仕事そのものが、
バック事故の起こりやすい環境だからです。
事故を減らすためには、まず「なぜ起こるのか」を知ることが大切です。
現場で見えてきた5つの原因
① 住宅街や狭い道路での作業が多い
LPガス配送では、一般的な運送会社とは異なり、
住宅街や細い生活道路を走行する機会が非常に多くあります。
戸建住宅の敷地内や、車一台がやっと通れる道路、
袋小路、Uターンができない場所へ入ることも珍しくありません。
こうした場所では、安全に作業するために何度も切り返したり、
バックで進入したりする必要があります。
バックする機会が多いということは、
それだけ事故が発生する可能性も高くなるということです。
② 一日に何十回もバックを繰り返している
LPガス会社では、一日に数十件、多い人では100件を超える訪問を行います。
訪問するたびに、
- 車を停める
- 荷物を積み降ろす
- 発進する
- バックで方向転換する
という作業を繰り返します。
一般の営業車では、一日に数回しかバックしないこともありますが、
LPガス配送では数十回以上バックすることもあります。
バック事故は、一度の大きなミスではなく、
日々繰り返される作業の中で発生する事故なのです。
③ お客様の大切な財産がすぐ近くにある
配送先の多くは住宅です。周囲には、
- 自家用車
- 植木
- ブロック塀
- 門柱
- カーポート
- 自転車
- 子どもの遊具
など、多くの障害物があります。
わずか数センチの確認不足が、お客様の大切な財産を傷つけてしまうことにつながります。
最近では住宅設備も大型化しており、
以前よりも車を動かすスペースが狭くなっている印象を受けます。
④ 慣れによる油断が事故につながることもある
毎日同じ地域を担当していると、
「この場所はいつも大丈夫」という感覚が生まれます。
しかし、その日に限って、
- 宅配便の車が停まっていた
- 近所の方が自転車を置いていた
- 工事車両が駐車していた
- 植木鉢が増えていた
など、いつもと違う状況になっていることがあります。
慣れている場所だからこそ、思い込みが事故につながることも少なくありません。
⑤ 死角を完全になくすことはできない
トラックや配送車には、どうしても運転席から見えない場所があります。
バックカメラやミラーで確認できる範囲は広がっていますが、
それでも死角をゼロにすることはできません。
特に小さな子どもや自転車は見落としやすく、重大事故につながる危険があります。
そのため、多くの会社では、
「迷ったら降りて確認する」という基本動作を徹底しています。
最新の設備も大切ですが、最後に事故を防ぐのは運転する人自身の安全確認です。
バック事故を減らすために会社ができること
バック事故は、運転手個人の努力だけでは防ぎきれません。
会社として、
- 危険な場所を共有する
- ヒヤリハット事例を教育に活用する
- 時間に余裕を持った配送計画を立てる
- 定期的に安全教育を実施する
といった取り組みを続けることが重要です。
最近では、ドライブレコーダーやAIを活用して、
実際の運転映像を使った教育を行う企業も増えています。
映像を活用することで、「なぜ危険だったのか」を具体的に振り返ることができ、
経験の浅いドライバーでも理解しやすくなります。
私どもがお付き合いしているプロパンガス会社様では、デジタコやドラレコの導入で、大きく事故は減りました。しかし、最後まで減らないのは軽微な事故。お客さんの軒先を壊した、ブロック塀に当てたなどです。人間が運転する以上、事故を完全にはなくせませんが、1件でも減らす努力が必要です。
クラウド型運行管理システムの活用
バック事故の対策は、安全教育だけではありません。
近年では、クラウド型の運行管理システムやAIドライブレコーダーを活用し、
事故やヒヤリハットの映像を記録・分析する企業が増えています。
運転日報や走行データと合わせて管理することで、
事故が発生しやすい場所や時間帯を把握し、安全教育へ反映することも可能です。
また、管理者が複数の営業所や配送拠点の状況をクラウド上で確認できるため、
教育内容の統一や情報共有にも役立っています。
クラウド型AIドライブレコーダー ▶
バック時のヒヤリハットや接触事故の映像を自動記録。危険挙動を検知し、安全教育にそのまま活用できます。
初期費用無料ドライブレコーダー ▶
初期費用0円・月額制で導入できるドライブレコーダー。多拠点・多台数でもコストを抑えて始められます。
ツールを導入することが目的ではなく、
収集したデータを現場の改善に活かし続けることが、
安全運転文化の定着につながります。
まとめ
LPガス配送では、住宅街や狭い道路を走行することが多く、
一日に何度もバックを繰り返します。
そのため、バック事故は特定のドライバーだけの問題ではなく、
業界全体が抱える共通の課題と言えるでしょう。
事故を減らすためには、運転技術だけに頼るのではなく、
配送環境を理解し、教育や運行管理の仕組みを継続的に改善していくことが大切です。

配送効率を高めるための考え方や、現場で培われたノウハウについてご紹介します。
著者プロフィール
2005年より法人向けデジタルタコグラフ・ドライブレコーダー・AIドラレコの導入支援を開始。
これまで20年以上にわたり、運送会社、LPガス会社、自治体、スクールバス事業者など、多くの現場で車両管理と安全運転対策を支援。
現場経験をもとに、当サイトでは「業界ごとの車両管理」をテーマに情報発信を行っている。
