プロパンガス会社の車両管理を考える 第2回|ベテランドライバーはなぜ多くの件数を回れるのか?配送ルートに隠された職人のノウハウ
2026/07/30
はじめに
LPガス会社では、同じ配送エリアを担当していても、
ドライバーによって一日に訪問できる件数が大きく異なります。
新人ドライバーは時間内に配送を終えることができず、
経験を積んだベテランドライバーは100件近い訪問をこなすこともあります。

「運転が速いから。」
そう思われることがありますが、実際にはそうではありません。
私たちが20年以上、LPガス会社の車両管理に携わり、
GPSデータやデジタルタコグラフの記録を分析してきた結果、
ベテランドライバーには共通した配送方法があることが分かりました。
今回は、現場で見えてきた配送効率化の考え方についてご紹介します。
配送効率は「スピード」ではなく「考え方」で決まる
配送効率というと、車を速く走らせることを想像する人もいるかもしれません。
しかし、住宅街では制限速度があり、安全確認も必要です。
実際には、数キロ速く走ったところで、一日の配送件数が大きく増えることはありません。
ベテランドライバーが優れているのは、
- どの順番で訪問するか
- どの道路を通るか
- どこへ車を停めるか
- どの時間帯に移動するか
こうした一つひとつを考えながら配送していることです。
GPSデータを分析すると共通点が見えてきた
デジタルタコグラフを導入した当初、
私たちはGPSの走行データを使って配送ルートを分析していました。
すると、配送件数が多いベテランドライバーには、
ある共通点があることが分かりました。
それは、「左折を中心に配送ルートを組み立てている」ということです。
充填所を出発すると、配送エリアを左回りに巡回し、
できるだけ右折を避けるように走っていました。
右折は対向車を待つ時間が発生しやすく、
交通量が多い時間帯では渋滞の原因にもなります。
一方、左折中心のルートは流れを止めることなく走行できるため、
結果として配送効率が向上していました。
これは偶然ではなく、多くのベテランドライバーに共通する工夫でした。
「どの橋を渡るか」まで考えている
配送ルートを見ていると、さらに興味深いことがありました。
川を渡る橋の選び方です。
一見すると、最短距離の橋を利用した方が効率的に思えます。
しかし、ベテランドライバーはそうではありませんでした。
朝夕に渋滞しやすい橋を避けたり、信号待ちが少ない橋を選んだりと、
交通状況まで考えながら配送ルートを組み立てていたのです。
距離ではなく、「止まらずに走れること」を優先していました。
出発時間も配送効率の一つ
配送効率はルートだけではありません。
出発時間を工夫しているドライバーも多くいました。
朝の通勤ラッシュが始まる前に出発し、
混雑する道路を避けることで、一日の配送に余裕を持たせています。
数十分早く出発するだけで、一日の交通状況は大きく変わります。
こうした積み重ねが、結果として多くの配送件数につながっていました。
ベテランドライバーの技術は「職人芸」
このような工夫は、マニュアルには書かれていません。
地域の道路事情を理解し、時間帯ごとの交通量を把握し、
お客様の訪問順を考えながら、毎日の経験を積み重ねて身に付けた技術です。
まさに職人芸と言えるでしょう。
一方で、このノウハウが個人だけのものになってしまうと、
ベテランドライバーの退職とともに失われてしまいます。
今後は、この経験を会社全体の財産として残していくことが重要になります。
データを活用して経験を引き継ぐ時代へ
以前は、配送ルートの工夫は口頭で引き継ぐことがほとんどでした。
しかし現在では、GPSデータ、デジタルタコグラフ、運行管理システムなどを活用することで、
どのようなルートを走ったのか、どの時間帯に配送しているのか、
どの道路を避けているのか、といった情報を客観的に確認できるようになりました。
ベテランドライバーの経験を「見える化」し、新人教育へ活かせる時代になっています。
配送効率化は働きやすさにもつながる
配送効率を高める目的は、配送件数を増やすことだけではありません。
効率よく配送できれば、
- 残業時間の削減
- ドライバーの負担軽減
- 交通事故の防止
- 教育時間の確保
など、多くのメリットがあります。
これからのLPガス会社では、「経験」だけに頼るのではなく、
経験とデータを組み合わせながら、
安全で効率的な配送体制を作っていくことが求められています。
GPSデータを分析していて一番驚いたのは、配送件数が多いドライバーほど、
右折を避けるルートを自然に選んでいたことです。
また、川を渡る橋の選び方や出発時間にも工夫がありました。
本人に聞くと「昔からこうしているだけ」と話していましたが、
その積み重ねが一日に何件もの差となって表れていました。
こうしたノウハウは、まさに現場で培われた職人技だと感じています。
クラウド型運行管理システムの活用
ベテランドライバーの経験は、会社にとって大切な財産です。
近年では、GPSやクラウド型運行管理システムを活用することで、
配送ルートや走行データを分析し、経験を「見える化」する企業が増えています。
これにより、配送エリアの見直しや訪問順序の改善だけでなく、
新人教育にも役立てることができます。
システムは経験を置き換えるものではありません。
経験を次の世代へ引き継ぐための道具として活用することが重要です。
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まとめ
ベテランドライバーが多くの配送をこなせる理由は、運転が速いからではありません。
右折を減らし、渋滞を避け、時間帯を考えながら配送ルートを組み立てる。
一つひとつは小さな工夫ですが、その積み重ねが大きな差となって表れています。
こうした現場の知恵を会社全体で共有し、
次の世代へ引き継いでいくことが、
これからのLPガス会社の車両管理において重要なテーマになるでしょう。

AIドライブレコーダーは新人教育に役立つ?映像を活用した安全運転教育とは
近年、AIドライブレコーダーやクラウド型運行管理システムを導入するLPガス会社が増えています。
しかし、本当に重要なのは「機器を導入すること」ではなく、そのデータや映像をどのように安全教育へ活かすかです。
次回は、20年以上にわたりLPガス会社の安全運転管理を支援してきた経験をもとに、
- AIドライブレコーダーで何が分かるのか
- 新人教育にどのように活用できるのか
- ベテランドライバーの運転と比較することで見えてくる改善点
について、現場目線で詳しく解説します。
著者プロフィール
2005年より法人向けデジタルタコグラフ・ドライブレコーダー・AIドラレコの導入支援を開始。
これまで20年以上にわたり、運送会社、LPガス会社、自治体、スクールバス事業者など、多くの現場で車両管理と安全運転対策を支援。
現場経験をもとに、当サイトでは「業界ごとの車両管理」をテーマに情報発信を行っている。
