【営業車の運行データから考えるシリーズ・第1回】営業マンの「行動半径」を計算してみる
2026/08/28
最初に
営業車で得意先を回る際、「1時間でどこまで行けるか」を意識したことはあるでしょうか。
感覚的には「1時間あれば、そこそこ遠くまで行けるはず」と思いがちですが、
実際の走行データを見てみると、想像より狭い範囲にとどまっていることが多いようです。
今回から新しいシリーズとして、営業車の運行データをもとに、
移動できる範囲と、そこにかかるコストについて考えていきます。
一般道路の平均速度は、実は時速30キロ台
下のグラフは、あるシステムサービス会社の関東地区における営業車の走行データから、
平均速度を集計したものです。

多くの車両が、時速20キロ台後半から40キロ台前半のあたりに集中していることが見て取れます。
一部には時速50キロを超える車両もありますが、全体としては時速30キロ台に収まる車両が多数を占めています。
このデータは関東地区のものですが、東北や中部地方の営業車データでも、
同様の傾向が見られるとのことです。つまり、地域特有の渋滞事情というより、
一般道路を走る車両に共通した傾向だと考えられます。
法定速度としては、一般道路は時速60キロが基準です。
しかし、信号待ちや交差点での停止・発進、周辺車両の流れなどを考慮すると、
実際の平均速度は法定速度の半分程度にとどまるケースが多いということが、
このデータからも裏付けられます。
「1時間で行ける範囲」は思ったより狭い
平均速度が時速30キロ台ということは、
1時間の移動でおおよそ30km程度しか進めない、ということになります。
つまり、営業マンが車で1時間かけて訪問できる範囲は、
自社の拠点を中心とした半径およそ30kmの円の中、ということになります。
逆から見ると、30km先の取引先を訪問しようとすれば、
往復でおよそ2時間の移動時間が必要になる、という計算です。
これは、「30kmくらいなら、ちょっと行けばすぐ着く」という感覚と比べると、
かなり大きなギャップがあるのではないでしょうか。
移動時間には、見えにくいコストがかかっている
ここで考えたいのが、その2時間の移動には、当然ながらコストが発生している、ということです。
たとえば、営業マン1人の時間単価を仮に3,000円とします(実際にはこれより高いケースがほとんどでしょう)。
30km先の顧客を訪問するために往復2時間かかるとすると、
移動時間だけで6,000円分の人件費が使われている計算になります。
これは、訪問そのものにかかる時間や、商談の内容とは別に、
「そこまで行くこと自体」に発生しているコストです。
つまり、30km先の顧客を訪問して利益を生み出そうとするならば、
最低でもこの6,000円を上回る利益が、その訪問から生まれる必要がある、ということになります。
移動中は、ほかの何も生み出せない
さらに見過ごされがちなのが、運転している間は、他の作業がまったくできないという事実です。
デスクワークであれば、移動中の電車内でメールを返したり、資料に目を通したりすることもできますが、
車を運転している以上、それはできません。
安全のためにも、運転中は運転に集中する必要があり、それ以外の付加価値を生み出す余地はないのです。
つまり、往復2時間の移動時間は、単に「時間がかかる」というだけでなく、
その2時間がまるごと、運転という行為以外には何も生み出さない時間になっている、ということです。
これは、電車や新幹線での移動であれば、車内でできる作業がある分、
まだいくらかの付加価値を生み出す余地があるのと対照的です。
こう考えると、先ほどの「往復2時間で6,000円分のコスト」という試算は、
実際にはもう少し重く受け止めるべき数字なのかもしれません。
この視点が意味すること
多くの営業活動では、「訪問件数」や「訪問先との関係の深さ」が重視され、
移動そのものにかかっているコストは、あまり意識されない傾向があります。
しかし、走行データから逆算してみると、
移動時間そのものが、れっきとした経費であることが分かります。
次回は、この「行動半径」の考え方をもとに、
訪問先との距離によって、どの程度の利益が必要になるのかを、
いくつかのパターンで具体的に試算してみたいと思います。
著者プロフィール
山口 功司(やまぐち こうじ)
恵那バッテリー電装株式会社代表取締役
1970年生まれ。岐阜県出身 愛知工業大学工学部卒業
株式会社カナデンを退職後、家業である同社に入社。
2007年より、法人向けドライブレコーダーの販売を開始。
年間1000台以上販売を続けている。
