運転日報の自動化とは?手書きから自動化するメリットを詳しく解説
2023/07/31
配送業などの物流系の企業をはじめ、営業などで社用車を保有している会社であれば必ず作成と保存が義務付けられている運転日報。
安全運行や適切な業務を行うために不可欠なものですが、従来通り手書きで運転日報を作成する業務には多くの無駄があります。手書きから自動化し、効果的に活用することで、業務効率化や売上アップにつながる可能性があります。
この記事では、運転日報に必要な記載項目、従来通り手書きで運転日報を運用することの問題点や運転日報を自動化するメリットなどを詳しく解説します。
運転日報の自動化とは
運転日報とは、企業が保有する車両を業務で使用する際に、運転者が氏名や運転日時、走行距離などを記録するものです。
一般貨物自動車運送事業を営む企業では、貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条により、運転日報の記録と1年間の保管が義務付けられています。
また、一般企業でも一定数以上の社有車を保有する事業者は、道路交通法施行規則により運転日誌を記録することが義務化されています。
運転日報に記載が必須とされているのは以下の項目です。
<一般貨物自動車運送事業の許可を受けている企業の場合>
・運転者の名前
・自動車登録番号
・発車・到着地点と日時
・主な経過地・運転距離
・業務上の交替地点
・休憩/睡眠の地点・休憩時間
・貨物の積載、集荷などの状況(車両総重量8t以上、最大積載量5t以上の事業用自動車に乗務した場合)
・事故や著しい遅延などが起きた場合の内容・原因
・経路等の運行指示の内容 など
<それ以外で規定以上の社用車を保有する企業の場合>
・運転者の名前
・走行開始の日時
・走行終了の日時
・運転距離
・自動車運転の状況を把握するため必要な、その他の事項
運転日報の本来の役割は安全運行を確保すること、運転者の安全を守ることです。運転時間が長くなり過度の疲労や睡眠不足の状態になると、事故のリスクが高くなってしまいます。
一般貨物自動車運送事業の運転日報で、休憩/睡眠の地点・休憩時間や貨物の積載、集荷などの状況が記載事項となっているのも、そうした事態を防ぐことが目的です。
その他、運転日報を上手く活用することで、車両を日常的に点検できる、運転が効率化できる、社員の勤怠管理ができるなど、事業においてさまざまな好影響をもたらしてくれます。
さらに、運転日報の作成を自動化することで、社員の負担やミスの可能性を減らせます。ドライバー・車両ごとに走行距離や燃費を比較できるなど、無駄なコストの削減にもつながります。
通信型ドラレコやテレマティクスなどに搭載されている車両管理システム機能を使えば、システムで取得・保存された走行ルートや距離、時間といった運行データを運転日報として出力することが可能です。
運転日報を自動化できれば、さらなる業務の効率化や業績の向上が実現できるでしょう。
手書きの運転日報の問題点
これまで、運転日報は手書きでの作成が主流でした。しかし、従来通りの方法で運用し続けていくためには以下のような多くのデメリットや問題点があります。
問題点1:文字が読みにくく、誤字脱字がある
手書きで作成する場合、運転者によっては文字にクセがあったり、急いでいるからと字が崩れてしまったりすることがあり、文字が読みにくくなってしまいます。
訪問先の会社名が読めなかったりすることがあると、管理者が記入内容を判読できず、確認に時間を要することや正しい情報を把握することができません。
さまざま筆跡を読み解き、不備を確認する手間が大きな負担となるのが問題です。
問題点2:作成、集計、転記作業に時間がかかる
また、作成や転記にかかる作業時間が長くなることもデメリットです。ドライバーからは「仕事後に帰社して日報を書くのが大変」「多忙な業務内で日報作成に時間が割かれる」という声もよく挙がっているといいます。
作成にかかる作業時間をシミュレーションしてみると、例えば1日の車両稼働台数が20台の場合、ドライバーの記入時間が毎日5分ほどと仮定しても、ひと月あたり20日稼働している事業所であれば
20台×5分×20日=2,000分=約33時間
これだけの時間を、本来の業務とは別に捻出する必要があります。そのために残業することになったり、毎日の積み重ねがストレスになったりすることもあるでしょう。
さらに、手書きのままではデータとして活用しにくいため、管理者が日々各ドライバーの運転日報に目を通し、それらをPCでExelなどの表計算ソフトに入力して、データをまとめることが一般的です。
この集計・転記にかかる時間も同じようにシミュレーションしてみると、入力時間を1台あたり3分と仮定してみても
20台×3分×20日=1,200分=20時間
これだけ多くの時間を割かれることになります。管理者の1日の勤務時間を8時間と考えると、1ヶ月あたり2.5日をこの業務のためだけに費やしていることになります。丸2日以上あれば、他の業務にもっと時間をかけたいと考える経営者も多いでしょう。
ドライバーが多ければ多いほど、管理者の負担が大きくなり、その分の時間とコストがかかってしまうことは、手書きの運転日報作成の大きな問題です。
問題点3:記入ミスなどのヒューマンエラーが発生
また、手書きでの書類作成で避けられないのが、記入ミスやチェックミスなどのヒューマンエラーです。
ドライバーが日報を書き、管理者や担当者がPCへ転記、管理者が転記内容を確認するという作業の中では、誤字などがあるかもしれない運転日報を解読し、転記をし、入力されたデータのチェックも必要です。
ドライバーは運転日報を1日の業務終了後に思い出しながらまとめて記載するケースが多いため、業務の一部を失念してしまったり、うろ覚えのまま記載したりして、情報に正確性が欠けることも少なくありません。
さらに、手書きで作成された運転日報をチェックして、Exelなどの表計算ソフトに入力する作業には、転記ミスのリスクもあります。
多くのドライバーの日報を入力し、ダブルチェックをおこなう管理者の負担も大きく、チェックもれが発生してしまうこともあるでしょう。
問題点4:保管場所や検索性など紙の管理による問題
手書きの運転日報は紙の状態で保管が必要になるため、管理に非常に手間がかかります。
先にも解説したように、運転日報は「最低1年間の保存期間」を設けることが義務付けられています。
紙のまま保存しておく場合、いつ誰が書いた日報かわかるようにきちんと整理しておく必要があります。運転者1人につき、毎日少なくとも1枚書類が増えていくため、ドライバーの数が多いほど、ファイリングの手間と保管場所のスペース確保が必須となります。
保管すべき書類が膨大な量になると、社内のスペースが足りない場合もあり、倉庫などを借りるコストがかかってしまいます。
紙の運転日報は検索性が低いため、過去の日報を照会する際は管理者の記憶を頼りに書類を探さなければならず、必要な情報を探すために手間や時間がかかってしまうこともあるでしょう。
振り返りをする際も、ファイルを取り出しページをめくりながら探す作業は多大な時間を要してしまいます。
運転日報の自動化のメリット
このように従来通りの手書きで運用し続けていくことにはさまざまな問題がある運転日報の作成。
作成から集計・管理まですべて自動化することで、多くのメリットがあります。
ドライバーにとってのメリット
まず、ドライバーにとっては、取得した情報が自動で集計され、運転日報が自動で作成されるため、手書きで報告書を作成する負担がなくなることが大きなメリットです。
記載が必要な情報を、正確に覚えていなくてはと考えることからも解放され、本来の運転業務に集中できます。
システムで取得されたデータで行動履歴などを確認でき、業務の見直しや安全意識の向上につなげることも可能で、業務の効率化・改善がしやすいことも運転日報自動化の利点です。
無駄を解消していくことにより、営業機会の損失をなくし、営業効率の向上と売上アップにもつなげることができるでしょう。
管理者にとってのメリット
管理者にとってもさまざまなメリットがあります。紙の運転日報で必要な業務であった、日報の確認、PCへの転記入力作業がなくなるため、集計や管理の手間が省け、その他の業務に時間を使うことができます。
運転日報はドライブレコーダーやテレマティクスなどのシステムで取得したデータを元に自動的にサーバーにアップ・保存されるため、入力・転記ミスの恐れがなく、改ざんされる心配もありません。より正確な情報の把握・記録が可能になります。
ドライバーや車両ごとの走行距離や燃費の比較がスムーズに実施でき、各種データはそのまま社員の行動履歴となるため、管理上の無駄を可視化し、最適な状態で管理可能です。
紙の書類で必須だった保管場所も不要で、集計用のPCと連動させ必要な情報だけを検索することも可能です。ペーパーレス化も図れるため、環境への負荷も軽減できます。
取得されたデータを集計し、傾向を分析して活用することで、業務効率アップや業績改善など企業全体の成長が期待できるでしょう。
まとめ
・運転日報は車両を業務使用する際、運転者が氏名や走行距離などを記録するもので、自動化すれば大幅な業務効率アップが実現できる
・手書きの運転日報には、読みにくい、作成に時間がかかる、ヒューマンエラーが発生する、保存するためのスペース確保が必要などのさまざまな問題点がある
・運転日報の自動化には、ドライバーと管理者双方に多くのメリットがあり、会社全体の業務効率アップや業績改善などにもつながる
(執筆者:酒井 恭子)