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公用車の無駄をなくす、自治体の工夫事例を紹介。

最初に

私たちの生活に身近な税金の使い道について、考えたことはありますか?
毎日使う道路や水道、ゴミ処理の費用は税金で賄われています。
2024年元旦に起きた能登半島地震で、被災地に真っ先に駆けつけた消防や警察、自衛隊もすべて税金で賄われています。
身近なところでは、市役所などの役場の建物、働く人の人件費、
業務で使うパソコンや公用車もすべて私たちの税金です。
公用車には車の購入以外にも、ガソリンなどの燃料費や車両保険、重量税などの税金などの維持費も必要です。
役場の業務に公用車が必要なことは、私たち市民も理解できます。
しかし、市役所にたくさん並ぶ車を見ると、
「こんなたくさんの台数は必要なのか?」
「無駄に車が多いのでは?」
「動かない車も多く、もったいない」
と思うことはありませんか?

そこで、今回は公用車にかかる費用と
その削減の可能性について考えてみます。

データで見る公用車の実態

一般財団法人エルピーガス振興センターが公用車について全国47都道府県と2395市町村・特別区を対象にアンケート調査を実施しました。
回収は954サンプル。回収率39%でした。
この調査によると、公用車の平均保有台数は都道府県が1,683台、市役所は291台、特別区が66台、村役場42台でした。
回答があった954自治体で約12万台の公用車を保有していることがわかりました。
回答がなかった自治体を含めると、日本には25万台程度の公用車が存在しているものと思われます。
自治体以外にも、官庁などで保有する車も多数存在しています。
日本全国で毎日荷物を運ぶヤマト運輸の車両台数は51,867台(2024年現在)。
これと比べても、日本には多くの公用車があることがわかります。

公用車の稼働率の実態

公用車の稼働率について、報告している自治体があります。

広島県三原市

広島県三原市が公開している資料によると、平成31年度(2019年度)公用車132台の稼働率を集計したところ、
年間の平均稼働率は21~37%でした。
三原市では、2020年度から24年度の5年間をかけて、
公用車を35台減らし、125台態勢とし、約3300万円の経費削減を見込んでいます。
三原市、行革で公用車2割削減 5カ年計画で3300万円節減見込む

三重県いなべ市

三重県いなべ市では、公用車73台の稼働率の平均は81.3%と高い状況でしたが(平成21年度報告書)
稼働率が60%以下の公用車が1割程度あり、車齢13年以上の老朽化した公用車の平均稼働率は77%でした。

宮城県多賀城市

宮城県多賀城市では、公用車77台の稼働率の算出を
稼働日数/246日(勤務を要する日)×100=稼働率(%)で計算したところ、
稼働率は78.4%でした。

稼働率の算出方法については、自治体によって違いがあることや、
算出基準の元となる運転日報に記載漏れの指摘あることに注意が必要です。

公用車に必要な維持管理費の実態

公用車の維持管理費について、いくつかの自治体から報告されています。

広島県庄原市

広島県庄原市では公用車241台を保有しています。
令和3年度、消防車11台を除く公用車230台の維持管理経費の合計は7,285万円でした。
1台あたりの平均は316,740円です。
経費の内訳はリース代にかかる賃借料が70%、燃料費が20%、自動車損害保険料にかかる役務費や車検点検などが残り10%となっています。
維持管理費は令和3年度(2021年度)に400万円以上増加しており、要因としては燃料費の増加でした。

滋賀県米原市

滋賀県米原市では平成23年10月に196台の公用車を保有しています。
このうち、庁舎間移動に使用する88台(園児用のバスや消防車などを含まれない)を対象に調査したところ、
稼働率は71.5%でした。
公用車の修理費、燃料費、消耗品費(タイヤ、オイルなど)、自動車保険、税金、リース料など
維持管理の費用は年平均1703万円でした。
米原市は庁舎間の走行距離と職員の移動コストから、原単位を算出しています。
一般道の平均速度を時速35キロで走行した時、16.97円/kmとしています。

公用車の維持管理には、駐車場代もありますが、
このような項目を報告する自治体はありませんでした。

公用車削減のメリット

財政面

公用車を削減による大きなメリットは、財政面です。
現在、自治体の多くが子育て支援や医療など社会福祉の負担が大きく、財政面に影響を与えています。
公用車を削減することによって、維持管理費用、購入費用が減り財政面にメリットが出ます。

環境面

カーボンニュートラルへの取り組みに好影響です。
2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするために行政の参加は欠かせません。
エコ運転の実施と、総合的な走行距離の削減により、温室効果ガスの排出を削減できます。

業務効率化

公用車に依存しない働き方への転換を進めていくことができます。
米原市の調査によると、公用車利用の多くが市内の役場関連施設への移動でした。
これらの業務がテレワークやウェブ会議によって代替が可能か検討することが必要です。
車を運転中にも人件費が発生しており、その費用は税金で賄われているという意識を持つことも必要ですが、
移動時間を削減することにより、業務時間を減らすことで、
働き方を変えていくことは、働く人の生活の質の向上となります。

交通事故の防止

公用車を減らし、運転時間が減ることで、
交通事故を起こす可能性が低下します。
業務中の運転中でも、交通事故を起こせば運転者本人に罰せられます。
交通事故は誰にとってもいいことはありません。

実現可能な公用車削減策

不要な公用車の削減については、次のような手順で行っていくことが理想的です。

公用車の稼働率を調査します。

 稼働率については、日単位ではなく時間単位など可能な限り細かく調べることが理想的です。
 一般的に車の稼働率は一日の5%程度です。(トラックやタクシー、バスなどを除き)
 1日1時間程度。走行距離にすると30km程度が目安です。

稼働率の低い車と高い車を分析します。

 自治体の報告書には、
 年式の新しい車は稼働率が高く、
 年式が古いなど、不人気の車は稼働率が低下する傾向にあるとのことです。
 稼働率が低い車は早めに処分するなどの対策が必要です。

レンタカー・カーシェアリングの活用

 自治体の報告書では、利用タイミングの集中が指摘されています。
 月末、年度末などの繁忙期に利用が集中し、公用車不足が発生しますが、
 その他の日は駐車場に多くの車が並ぶということがあります。
 ピーク時に合わせて公用車の台数を揃えるために、普段は車が余ってしまいます。
 繁忙期はレンタカーやカーシェアリングなどを活用することで、
 職員の不便や不満を解消することができます。

公共交通機関の利用促進

 バスなどの公共交通機関の利用促進が望まれます。
 職員の移動の大半は市内の役場間という調査結果があります。
 これを元に、コミュニティバスを運行することなどが考えられます。
 これにより、市民へのコミュニティバスの利用促進にもつながります。

クラウド型の運行管理システムの採用

自治体では多くの公用車を保有していますが、
”手書きの運行日報を職員が手書きで記入する程度”の運行管理に留まっています。
コストがかからない点はいいですが、
書き忘れ、記入ミス、日報の回収、配布、集計業務など様々な問題があります。
集計業務はエクセルなどでやっているところも多いと思いますが、
・数字を入力して
・書式を整えて
・コメントを付けて
・印刷して
・関係部署に回覧
というのは生産性の高い仕事とは言いがたい業務です。
ルーチンが決まっている業務は自動化することを考えるべきです。
現在はクラウド型の運行管理システムが多く出ています。

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これらを採用することによって

  • 運転日報の記入→自動化。運転時間、走行距離、経路などを正確に記録
  • 運転日報の回収→不要
  • 集計業務→不要
  • 印刷→不要
  • 関係部署に回覧→担当者がクラウドに直接アクセスするので不要

になります。
導入や維持に費用は発生しますが、
業務量を減らすことに大きな効果があります。

まとめ

公用車の削減は、歳出が増える一方の地方自治体において
持続可能なまちづくりへの第一歩です。
一方、削減や縮小、あるいは古くて安全性の低い車ばかりでは
職員のやる気も落ち、行政サービスの品質低下にもなり、
職員を応募する若い人も減ることでしょう。

これからの自治体は燃費性能や安全性能の高い車を有効的に利用しながら、
トータルで公用車の維持管理費の削減を
継続的に行うことが必須となるでしょう。

著者プロフィール

山口 功司(やまぐち こうじ)
恵那バッテリー電装株式会社代表取締役
1970年生まれ。岐阜県出身 愛知工業大学工学部卒業
株式会社カナデンを退職後、家業である同社に入社。
2007年より、法人向けドライブレコーダーの販売を開始。
年間1000台以上販売を続けている。

恵那バッテリーでは、
法人のお客様の商用車管理・運用に
便利なサービスをご提供しております。
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