【営業車の運行データから考えるシリーズ・第2回】「訪問すべきでない距離」という発想
最初に
前回、一般道路の平均速度が時速30キロ台であることから、
営業車で1時間かけて行ける範囲はおよそ半径30km、
そして30km先の訪問には往復2時間、時間単価3,000円換算で6,000円分のコストがかかる、という計算をお伝えしました。
さらに、その移動時間は運転以外の付加価値を生まない、完全な空白時間であることにも触れました。
今回は、実際の走行データを見ながら、この考え方をもう少し具体的に検証してみます。
実際のデータで見る、月間の走行実態
下のグラフは、ある月(7月)における、営業担当者ごとの走行距離を集計したものです。

これを見ると、数人だけ突出して走行距離が多い担当者がいるものの、
大半の担当者は月間1,000km未満に収まっていることが分かります。
仮に月20日稼働だとすると、1,000kmは1日あたり50km程度であり、
前回計算した「1時間で行ける範囲=半径30km」という数字とも、おおむね整合します。
同じ月の走行時間についても見てみます。

こちらも同様に、一部の担当者が突出して走行時間が長く、
大半はそれよりもかなり短い時間に収まっている、という分布になっています。
「突出した数人」は何を意味するのか
興味深いのは、走行距離・走行時間のいずれのグラフでも、
一部の担当者だけが突出して数値が大きい、という傾向が共通して見られることです。
これにはいくつかの解釈が考えられます。
広いエリアを1人で担当しているため、物理的に走行距離が伸びているケースもあるでしょう。
しかし、前回の試算を踏まえると、
「本当にその距離を移動してまで訪問する必要があったのか」という観点も、
一度は検証してみる価値があるのではないでしょうか。
大半の担当者が月1,000km未満に収まっているということは、
裏を返せば、多くの営業活動は、実は前回計算した「半径30km圏内」に近い範囲で
成立している、ということでもあります。
その中で数人だけ突出しているのであれば、
それは「効率の良い担当エリア」と「そうでない担当エリア」の差なのか、
あるいは個人の訪問スタイルの差なのか、データを掘り下げて確認する価値がありそうです。
距離別に見る「最低限必要な利益」
前回の考え方をもとに、訪問先までの距離別に、
移動だけでかかるコストを整理してみます。
条件は、時速30キロ台の走行、時間単価3,000円とします。
片道10km(往復20km・移動時間約40分)
移動コストの目安:約2,000円
片道20km(往復40km・移動時間約80分)
移動コストの目安:約4,000円
片道30km(往復60km・移動時間約120分)
移動コストの目安:約6,000円
片道50km(往復100km・移動時間約200分)
移動コストの目安:約10,000円
こうして並べてみると、距離が伸びるほど、
その訪問から得られる利益に求められるハードルも、比例して上がっていくことが分かります。
片道50kmの訪問であれば、移動コストだけで1万円が必要になる計算です。
これに加えて、商談そのものにかかる時間や、ガソリン代・車両の維持費といった実費も別途発生しています。
この視点をどう活かすか
この試算が示しているのは、「遠方への訪問をやめるべき」ということではありません。
そうではなく、「距離に応じて、どのくらいの利益が必要になるか」を、
あらかじめ意識しておくことの重要性です。
大半の担当者のデータが物語るように、
効率の良い営業活動は、自然と一定の範囲内に収まっていく傾向があります。
その中で、突出して走行距離・走行時間が多いデータが見つかったときに、
「なぜこの担当者だけ数値が大きいのか」を確認できる状態にしておくことが、
データを活用する営業管理の第一歩だと言えるでしょう。
次回は、この走行データをさらに掘り下げ、
訪問順序やルートの組み方によって、同じ訪問件数でも移動時間がどう変わるのか、
という点を考えてみたいと思います。
著者プロフィール
山口 功司(やまぐち こうじ)
恵那バッテリー電装株式会社代表取締役
1970年生まれ。岐阜県出身 愛知工業大学工学部卒業。株式会社カナデンを退職後、家業である同社に入社。
2000年前後の黎明期からドライブレコーダー市場を見続け、2007年より法人向け販売を開始。これまでの取り付け実績は数万台。2009年からは「無事故プログラム」の全国展開に携わり、現在は同事業が売上の4割を占めるまでに成長した。北海道から沖縄まで、全国どこでも対応する取付体制を自ら築いてきた。
