【公用車管理を考えるシリーズ・第3回/全7回】”言った・言わない”をなくす 公用車管理に客観性を持たせる方法
最初に
前回、スクールバスの運行を委託先に任せること自体は合理的な選択である一方、
自治体側が日々の運行状況を客観的に把握する手段を持っておくことの重要性についてお伝えしました。
今回は、その具体的な手段として、通信型ドライブレコーダーやGPS運行管理システムを活用した
「データ共有型」の管理体制について考えてみます。
「業務を奪う」のではなく「データを共有する」という発想
委託先に運行を任せている以上、日々の運転業務や乗務員の管理そのものは、
引き続き委託先の責任のもとで行われるべきものです。
ここで大切なのは、委託先の業務を自治体が肩代わりすることではなく、
委託先が持っている運行データを、自治体側とも共有できる仕組みを用意するという考え方です。
従来、自治体は委託先からの口頭・書面による事後報告に頼らざるを得ない場面が多くありました。
これは「言った・言わない」のリスクを、委託先・自治体の双方が抱えることにもつながります。
運行データをリアルタイムで共有できる基盤があれば、
委託先にとっても「客観的な記録が残っている」という安心材料になり、
自治体にとっても「報告を待たずに状況を確認できる」というメリットが生まれます。
どちらか一方の負担を増やすのではなく、双方にとって利点のある仕組みとして設計することがポイントです。
前方カメラだけでなく、車内カメラも
ドライブレコーダーというと、前方の映像を記録するものというイメージが強いかもしれません。
しかし、スクールバスのように子どもたちが乗車する車両では、
車内の様子を記録できるカメラの価値も大きくなります。
前方カメラは、運転挙動そのもの(速度、ブレーキのタイミング、踏切や交差点での動き方など)を客観的に記録し、
危険運転の兆候を早期に把握することに役立ちます。
一方、車内カメラがあれば、車内でのトラブルや、児童の体調変化、
緊急時に車内でどのような対応が取られたかといった状況も、映像として振り返ることができます。
前方・車内の両方を記録することで、
「運転士が何をしていたか」だけでなく「車内で何が起きていたか」まで、
客観的に確認できる体制が整います。
通信型であることの意味
記録型のドライブレコーダーは、事故が起きたあとに映像を取り出して確認するものです。
一方、通信型のドライブレコーダーは、映像や走行データをクラウド上でリアルタイムに近い形で確認できるという特長があります。
異常事態が発生した際に、管理者が現地に駆けつけなくても状況を把握できることは、
初動対応のスピードに直結します。
また、平常時であっても、急ブレーキや急加速といった運転挙動のデータが日々蓄積されるため、
運転士個人の「大丈夫でした」という主観的な報告に頼らず、
客観的なデータにもとづいて安全運転の指導や評価を行うことができます。
クラウド型AIドライブレコーダー ▶
速度・ブレーキ・車間距離などをデータで見える化。前方だけでなく車内の状況も含めて、通信型ならではのリアルタイム性で安全運転の定着を支えます。
無事故プログラム ▶
日々の運転データを蓄積・分析し、運転士やルートに潜むリスクの傾向を把握。事後対応ではなく、事故を未然に防ぐ予防型の安全管理を実現します。
MOQULの運行管理機能・無事故プログラムとの連携
当社が提供するスクールバス管理システム「MOQUL」では、
GPSによる位置情報の把握と、LINEを活用した保護者・学校への通知機能を提供しています。
これに通信型ドライブレコーダーのデータを組み合わせることで、
「バスが今どこにいるか」という位置情報だけでなく、
「バスの中で何が起きているか」「どのような運転がなされているか」まで、
一体的に把握できる仕組みを構築することができます。
また、無事故プログラムを通じて、日々の運転データを蓄積・分析することで、
特定の運転士や特定のルートに潜むリスクの傾向を把握し、
事後対応ではなく、事前の予防に力点を置いた安全管理につなげることも可能です。
まとめ
スクールバスの運行を委託先に任せることと、
自治体が運行実態を把握することは、決して矛盾するものではありません。
「業務は委託先に、データは自治体とも共有」という考え方を土台にすれば、
委託先・自治体・保護者の三者が同じ事実を共有できる体制を、無理なく築くことができます。
公用車の管理体制について、自治体でのご検討や導入のご相談があれば、
当社(恵那バッテリー電装)およびMOQULまでお気軽にお問い合わせください。
連載記事一覧
第1回 公用車は一枚岩ではない 乗用車・ごみ収集車・バスで異なる管理のルール https://enabattery.co.jp/useful/1949/(8月10日(月)配信)
第2回 ”報告を受ける”だけの管理でよいのか スクールバス事故が投げかけた問い https://enabattery.co.jp/useful/1951/(8月12日(水)配信)
第3回 ”言った・言わない”をなくす 公用車管理に客観性を持たせる方法(8月14日(金)配信)
第4回 ”たまたま気づけた”では済まされない 公用車の不適切利用はなぜ見過ごされるのか https://enabattery.co.jp/useful/1954/(8月17日(月)配信)
第5回 ルールはあるのに、証明する手段がない 自治体の公用車規程を読み解く https://enabattery.co.jp/useful/1956/(8月19日(水)配信)
第6回 自己申告に頼らない 運転免許確認とカギ管理の仕組み化 https://enabattery.co.jp/useful/1958/(8月21日(金)配信)
第7回(完結編) 管理を”プロに任せる”という選択 車検切れをなくす仕組み https://enabattery.co.jp/useful/1960/(8月24日(月)配信)
著者プロフィール
山口 功司(やまぐち こうじ)
恵那バッテリー電装株式会社代表取締役
1970年生まれ。岐阜県出身 愛知工業大学工学部卒業。株式会社カナデンを退職後、家業である同社に入社。
2000年前後の黎明期からドライブレコーダー市場を見続け、2007年より法人向け販売を開始。これまでの取り付け実績は数万台。2009年からは「無事故プログラム」の全国展開に携わり、現在は同事業が売上の4割を占めるまでに成長した。北海道から沖縄まで、全国どこでも対応する取付体制を自ら築いてきた。
