【公用車管理を考えるシリーズ・第5回/全7回】ルールはあるのに、証明する手段がない 自治体の公用車規程を読み解く
最初に
ここまで、公用車の管理制度の違いや、委託運行の課題、不適切利用の実態について取り上げてきました。
今回は少し視点を変えて、実際に自治体が定めている「公用車管理規程」を見ながら、
これらの問題がどのように定義されているのかを整理してみます。
多くの自治体が、公用車の使用に関するルールを規程としてきちんと定めています。
つまり、「ルールが存在しない」ことが問題なのではありません。
問題は、そのルールを守っているかどうかを、後から客観的に確認する手段が、
多くの場合用意されていないという点にあります。
「職員以外は運転させない」というルール
公用車の管理規程を見てみると、運転できる者を職員に限定する規定が多く見られます。
ある自治体の規程では、公用車は公用以外に使用してはならず、
原則として職員以外の者に使用させてはならないと明記されています。
一方で、業務委託が絡む場面を想定し、
運転者の定義に「町長が特に必要と認める職員以外の者」や
「委託された者」を含めている自治体もあります。
これは、スクールバスの運行委託のように、
職員以外が運転する場面が現実にあることを踏まえた規定と言えます。
ルールとしては明確です。しかし、
「実際にその車を運転していたのが、規程で認められた人物だったか」を
後から確認する手段までは、多くの規程には書かれていません。
「同乗させてはならない」というルール
公用車や自家用車の公務使用に関する規程では、
同乗者を制限する条文も見られます。
ある町の規程では、公務のために自家用車を運転する職員は、
緊急時など特定の場合を除き、何人も同乗させてはならないと定められています。
これも、目的外の同乗(家族の送迎など)を防ぐための、理にかなったルールです。
しかし、実際に誰が同乗していたかを客観的に記録する仕組みまでは、
やはり多くの規程で想定されていません。
運転日誌とアルコールチェックの記録義務
公用車を使用する際には、運転者名・使用時間・行き先などを運転日誌に記入し、
一定期間保存することを義務付けている自治体が多くあります。
また、2022年以降の道路交通法改正を受けて、
運転前後のアルコールチェックを実施し、その記録を1年間保存することを定める規程も増えています。
これらの記録義務は、いずれも重要な取り組みです。
ただし、その記入・記録の多くは、運転者自身の申告にもとづいています。
つまり、「規程で定められた手続きを、本人が正しく行ったかどうか」自体が、
本人の申告以外では確認しづらい構造になっているのです。
共通して見えてくる構造
ここまで見てきた規程には、共通した特徴があります。
それは、「誰が運転してよいか」「誰を同乗させてはいけないか」「何を記録すべきか」という
ルールそのものは明確に定められている一方で、
そのルールが守られていることを、第三者が客観的に確認する手段については、
多くの場合、規程の外側に置かれているということです。
これは、規程を作った自治体の怠慢というより、
紙の運行日誌を前提とした管理体制が長く続いてきたことの、
自然な帰結だと考えるのが実態に近いと思います。
運行日誌という仕組み自体が、もともと自己申告を前提に設計されているため、
そこに客観的な裏付けを加えるという発想が、これまで組み込まれてこなかったのです。
まとめ
公用車の管理をめぐる問題の多くは、
「ルールがないから起きる」というより、
「ルールはあるが、それを裏付ける記録がない」ために起きているケースが多いようです。
次回以降は、この「裏付け」の部分を、
どのような仕組みで補っていけるのかを、より具体的に考えていきます。
連載記事一覧
第1回 公用車は一枚岩ではない 乗用車・ごみ収集車・バスで異なる管理のルール https://enabattery.co.jp/useful/1949/(8月10日(月)配信)
第2回 ”報告を受ける”だけの管理でよいのか スクールバス事故が投げかけた問い https://enabattery.co.jp/useful/1951/(8月12日(水)配信)
第3回 ”言った・言わない”をなくす 公用車管理に客観性を持たせる方法 https://enabattery.co.jp/useful/1944/(8月14日(金)配信)
第4回 ”たまたま気づけた”では済まされない 公用車の不適切利用はなぜ見過ごされるのか https://enabattery.co.jp/useful/1954/(8月17日(月)配信)
第5回 ルールはあるのに、証明する手段がない 自治体の公用車規程を読み解く(8月19日(水)配信)
第6回 自己申告に頼らない 運転免許確認とカギ管理の仕組み化 https://enabattery.co.jp/useful/1958/(8月21日(金)配信)
第7回(完結編) 管理を”プロに任せる”という選択 車検切れをなくす仕組み https://enabattery.co.jp/useful/1960/(8月24日(月)配信)
著者プロフィール
山口 功司(やまぐち こうじ)
恵那バッテリー電装株式会社代表取締役
1970年生まれ。岐阜県出身 愛知工業大学工学部卒業。株式会社カナデンを退職後、家業である同社に入社。
2000年前後の黎明期からドライブレコーダー市場を見続け、2007年より法人向け販売を開始。これまでの取り付け実績は数万台。2009年からは「無事故プログラム」の全国展開に携わり、現在は同事業が売上の4割を占めるまでに成長した。北海道から沖縄まで、全国どこでも対応する取付体制を自ら築いてきた。
