【公用車管理を考えるシリーズ・第1回/全7回】公用車は一枚岩ではない 乗用車・ごみ収集車・バスで異なる管理のルール
2026/08/10
【公用車管理を考えるシリーズ・第1回/全7回】公用車は一枚岩ではない 乗用車・ごみ収集車・バスで異なる管理のルール
最初に
「公用車」と聞くと、多くの方は市役所の駐車場に並ぶ白い乗用車をイメージされるのではないでしょうか。
しかし、自治体が保有・運行している車両は、実はそれだけではありません。
職員が使う乗用車や軽自動車のほかに、
ごみ収集車、コミュニティバスやスクールバスといった車両も、広い意味では「公用車」に含まれます。
そして、これらの車両は、実は法律上まったく別の枠組みで管理されていることをご存知でしょうか。
今回は、公用車の種類ごとの管理制度の違いについて整理してみます。
公用車には「白ナンバー」と「緑ナンバー」がある
車のナンバープレートには、大きく分けて「白ナンバー(自家用)」と「緑ナンバー(事業用)」の2種類があります。
一般的に、自社の業務のために使う車は白ナンバー、
運送そのもので料金を得る場合(タクシーやバス、貨物運送など)は緑ナンバーとなります。
この違いは、単なる色の違いではなく、適用される法律と、車両を管理する責任者の制度がまったく異なります。
白ナンバー:道路交通法にもとづく「安全運転管理者」
職員が使う乗用車や、自治体が直営で運行するごみ収集車の多くは、白ナンバー(自家用自動車)に該当します。
道路交通法では、乗車定員11人以上の自動車を1台以上、
またはその他の自動車を5台以上使用する事業所ごとに、
「安全運転管理者」を選任することが義務付けられています。
20台以上を保有する場合には、副安全運転管理者の追加選任も必要です。
安全運転管理者は、運転者の状態把握やアルコールチェックの実施、運行計画の作成などを担う役割です。
選任を怠った場合は50万円以下の罰金、届出を怠った場合は5万円以下の罰金または科料が科される可能性があります。
緑ナンバー:道路運送法にもとづく「運行管理者」
一方、自治体が旅客運送事業の許可を得て運行するコミュニティバスなどは、緑ナンバー(事業用自動車)に該当することがあります。
この場合に必要となるのが「運行管理者」です。
運行管理者は、安全運転管理者とは別の資格・選任制度であり、
乗務割の作成や、運転者の休憩・睡眠時間の管理など、より厳格な業務が求められます。
貸切バスについては、過去の重大事故を踏まえて選任人数の基準が引き上げられるなど、
緑ナンバー車両の管理はより厳しい方向で法整備が進んできた経緯があります。
安全運転管理者は「求人」に出にくいという実態
興味深いのは、安全運転管理者そのものの求人はほとんど見かけないということです。
これは、安全運転管理者が外部から専任で雇用するポストではなく、
総務課長や管財課長など、既存の職員が本来の業務と兼務する形で任命される「充て職」であることが多いためです。
専任の担当者がいるわけではなく、本来業務のかたわらで安全運転管理業務を担っているケースが多いというのが実情です。
これ自体が悪いわけではありませんが、
兼務であるがゆえに、日々の点検業務が形骸化しやすいという構造的なリスクは意識しておく必要があります。
スクールバスは「所有は市、運行は委託」というパターンが多い
公立小中学校のスクールバスは、少し特殊な位置づけにあります。
車両そのものは自治体(教育委員会)が保有しつつ、
実際の運転業務・運行管理は、民間のバス事業者に委託されているケースが全国的に多く見られます。
この場合、車両のナンバー区分や、安全運転管理者・運行管理者のどちらが選任されるかは、
運行の形態(自治体の直営か、委託事業者による有償運送か)によって変わってきます。
「市が所有しているから、市がすべて管理している」と思われがちですが、
実際の運行実務は委託先に委ねられているという点は、見落とされがちなポイントです。
クラウド型AIドライブレコーダー ▶
安全運転管理者や運行管理者による日々の確認業務を、走行データという客観的な記録で後押しします。
無事故プログラム ▶
兼務になりがちな管理者の負担を軽減しながら、車両ごとの運転傾向を継続的に把握できる仕組みです。
まとめ
ひとくちに「公用車」と言っても、その実態は一様ではありません。
職員の乗用車、ごみ収集車、コミュニティバス、スクールバスでは、
適用される法律も、管理責任者の制度も異なります。
特にスクールバスのように「所有と運行が分離」しているケースでは、
自治体がどこまで実態を把握できているかが問われる場面も出てきます。
次回は、実際に起きたスクールバスの事故事例をもとに、
この「所有と運行の分離」がもたらす管理上の課題について考えてみたいと思います。
連載記事一覧
第1回 公用車は一枚岩ではない 乗用車・ごみ収集車・バスで異なる管理のルール(8月10日(月)配信)
第2回 ”報告を受ける”だけの管理でよいのか スクールバス事故が投げかけた問い https://enabattery.co.jp/useful/1951/(8月12日(水)配信)
第3回 ”言った・言わない”をなくす 公用車管理に客観性を持たせる方法 https://enabattery.co.jp/useful/1944/(8月14日(金)配信)
第4回 ”たまたま気づけた”では済まされない 公用車の不適切利用はなぜ見過ごされるのか https://enabattery.co.jp/useful/1954/(8月17日(月)配信)
第5回 ルールはあるのに、証明する手段がない 自治体の公用車規程を読み解く https://enabattery.co.jp/useful/1956/(8月19日(水)配信)
第6回 自己申告に頼らない 運転免許確認とカギ管理の仕組み化 https://enabattery.co.jp/useful/1958/(8月21日(金)配信)
第7回(完結編) 管理を”プロに任せる”という選択 車検切れをなくす仕組み https://enabattery.co.jp/useful/1960/(8月24日(月)配信)
著者プロフィール
山口 功司(やまぐち こうじ)
恵那バッテリー電装株式会社代表取締役
1970年生まれ。岐阜県出身 愛知工業大学工学部卒業
株式会社カナデンを退職後、家業である同社に入社。
2007年より、法人向けドライブレコーダーの販売を開始。
年間1000台以上販売を続けている。
